九月十六日

 日付が変わったので昨日の日記を書いています。敬老の日です(でした)。皆さんしっかり敬いましたか? 前日に祖父の法事があったこともあり唯一存命の祖母へ無限の敬を飛ばしていました。届いたかな。

 最近読んだ本のことを少し書いて日記にします。友人から三秋縋『いたいのいたいの、とんでゆけ』という小説を薦められ、先日読み終わりました。ネタバレをしないよう気をつけます。

自分で殺した女の子に恋をするなんて、どうかしている。
「私、死んじゃいました。どうしてくれるんですか?」
 何もかもに見捨てられて一人きりになった二十二歳の秋、僕は殺人犯になってしまった――はずだった。
 僕に殺された少女は、死の瞬間を“先送り”することによって十日間の猶予を得た。彼女はその貴重な十日間を、自分の人生を台無しにした連中への復讐に捧げる決意をする。
「当然あなたにも手伝ってもらいますよ、人殺しさん」
 復讐を重ねていく中で、僕たちは知らず知らずのうちに、二人の出会いの裏に隠された真実に近付いていく。それは哀しくも温かい日々の記憶。そしてあの日の「さよなら」。

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 三秋縋という名前は前々から知っていて、しかし本を手に取ることはなかったわけですが。いやぁ、面白い話でした。読まなかったことを少し後悔するくらい。
 読み終わったその日は上手く整理がつかなかったので、数日の間は気に入った部分やらを読み返したりしていました。隣の美大生がお気に入りです。
 あらすじにあるから言っていいだろうけど、この作品の起点或いは機転となるのは少女の持つ〈先送り〉という超常現象の能力です。僕はこういう超常現象を中心にしながらもあくまで超常現象を副要素としか見なさずに描かれる物語が好きです。例に漏れずこの超常現象が何なのか、どういう原理なのか、どうして少女が目覚めたのかということは一切説明しません。SFじゃないし。
 幸せや幸福、愛を描く際に超常現象を噛ませるというのは、ある意味ではその超常現象なくしてはそれらが成立しなかったという思想であり、僕はここをとても気に入りました。新海誠の『秒速五センチメートル』と『君の名は。』が頭に浮かんだ。 本編とは特に関係ないですが。
 物語には頻繁に洋楽が出てきます。僕はストーリーに洋楽を絡ませる手法を若干洒落臭いと感じる手合いなのですがまぁ知ってる曲だったので許容範囲です。これが気に入った作品バイアスってやつですよ。
 復讐はあくまで淡々と、客観的。『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』に少し似ていました。語り口は全然違うけれど流れる空気が。小指が痛い。
 後書きに「穴」という例えが使われていて、僕はこの作品の読後感にひとつの形を与えられたように感じました。もちろんある側面ではそうというだけですが。事の顛末を一般的な幸せに照らし合わせれば齟齬に溢れているだろうけど、だからこそ僕は最後に辿り着いたものを純粋に綺麗だと感じました。
 まぁ、この僕のお墨付きですし(?)読んでみてね。おやすみ。
 15分くらいで書けたのは大きい進歩では。そのあとプレビューを見て、一字だけ改行されてるみたいなのを消す作業に時間がかかった。