2022上半期ベスト【本】

 上半期に読んだ本で面白かったやつ五冊。

5位『現代整数論の風景 素数からゼータ関数まで』

 読みやすい○ 面白い○ 誤植が多い△
 ゼータ関数の記述が多いけど、ぼくの興味的に代数的整数論について書いてあるところが面白かった。ガウスの予想の照明で、一般化リーマン予想の肯定からも否定からもガウスの予想が証明できるのでガウスの予想は正しい、というので笑ってしまった。

4位『私たちはどう学んでいるのか 創発から見る認知の変化』

 類書で『教師の勝算』『勉強法が変わる本』なども読んだ。最近思うのは、学習というのは「既存の知識だけで説明できる事柄」を積み上げていく、というかたちではなく、その概念の「振る舞い」によって理解する、という面がやはりあるなあということ。ぼくらが数学を学んでて、あとになってふとある概念を「理解した」と思う瞬間があるのは、振る舞いを正しく分かったからのように思う。人間の人生のプロファイルを読むことと、実際に会うことの差に似ている。

3位『ブラック・ジャックの解釈学 内科医の視点』

 ブラック・ジャックの描写を現代医学から整理・再診断するもの。手塚治虫へのリスペクトに溢れており、極限まで作品の描写をもとに医学によって解体していくので非常に読み応えがある。当時まだ病名のない"症例"を高い精度で漫画に落とし込んでいたりするのはさすがマンガの神様と言うべきか。

2位『脳が読みたくなるストーリーの書き方』

 脳科学? はあんまり関係ないけど、読者というのは退屈なら作者に一切の忖度なく本を閉じる、ということをスタート地点に、いかなる物語なら読者は続きを読みたいと思うのかを論じている。この内容をもとに既存の物語をいろいろ観なおしてみると自分の中に物語に対する横軸がしっかり構築された、気がする。物語というのは(単純化すれば)主人公の内面的問題の更新と解決を原動力に進むのであり、プロット(できごと)はそれに付随するものでなければならない、あらゆるできごとは主人公の内面への作用で意味が決まる、といった指摘は、自分にはない洞察だった(たしかに〜〜〜と膝を叩いた)。

1位『ぬるめた』

 バカ面白い。シナリオ、構図、革新性どれも頭一つ抜けた現代4コマ漫画。どうでもよさそうな場面でキャラクターの矢印を強めに匂わせるの感情がバグるのでやめてほしい。さきながちあきの髪を切る回が好きです。

⭐︎

 なんだかジャンルを分けて選んでもよかった気がしますが、順序付けというのは本来的に暴力なので、やると疲れちゃってもういいかなという気分になりました。2022後半戦は小説とかも入れてもっといっぱい本を読みたいです。大学生のときにもっと触れておけば、と後悔するもの四天王は本、映画、音楽、美味しいお酒なんだそうです(ぼく調べ)。もっといっぱい本を読んで、社会人という長い長い知的な冬眠に耐えたいとおもいます。